2009年9月18日

イメージづくりと演出

民主党政権がスタートした。
官僚のメモなしに夜中まで及ぶ就任会見や、新大臣が翌日から次々と各省庁に方針変更決定を伝えたり、指示・命令を出したりしているのが、トップニュースで報じられている。自民党政権時代の新閣僚がどんな動きをしていたかなど覚えていない国民にとっても、テレビでは今の映像とともに以前とどう違うかを克明に説明するので、是非はともかく「変わったんだな」と誰もが思うような展開が、今のところ進んでいる。
一方で、覚醒剤で逮捕された酒井法子が保釈されたのが、もうひとつのトップニュースだ。警察署を出てくるところからの映像が流れる。微笑む酒井法子の表情に、私はやや違和感を覚えたが、その後、深々と頭を下げるつむじのまわりが、生え際の黒い髪がしっかり伸びて、茶色く染めた髪との境い目がはっきりするのを見て、逃亡から拘留までが確かなことをまざまざと見せつけられた気がした。けれどもどんなにかボロボロになっているだろうと同情していた気持ちは、酒井法子がきれいにメイクし、黒の上下スーツの清楚な雰囲気を醸し出していることで、再び違和感になってしまうのだ。今日になって、記者会見で涙を流しても化粧が崩れないことや、保釈直前にヘアメイク担当者が警察署に入って行ったことなどが報じられた。保釈直後の微笑みもあって、意地悪な私は、「やっぱり女優は違う。本当に反省しているのかな。」と感じてしまったし、テレビでもそういう論調だった。
最初のイメージ作りは重要だ。
民主党は新体制発足直後から、次々と「変わった」感を見せている。新たな出発を見事に演出していると思う。多少稚拙であったとしても、「変えようと頑張っている」様子は好意的に受け取られやすい。共感も得やすいだろう。
一方で、酒井法子は生まれ変わった再出発を見せるべきこの段階で、事件発覚前の清楚な酒井法子が謝罪したように見えた。これは「変わっていない」ことを見せたことに他ならない。だから反省しているように見えにくく、酒井法子に対して同情していた人までもが裏切られた感=否定的なイメージを抱いてしまうのだ。もしここでノーメイクで出てきて、声も出せないほどに傷つき反省している(ように見える)映像が流れれば、「もう許してあげよう」という空気が出てきたかもしれないのだ。SMAPの草彅クンはこの形だったと思う。
すべてが演出、と考えるのは心地よいものではないが、最初のイメージ造成で、民主党は成功し、酒井法子は失敗したと、私は思う。
企業も商品も同じで、最初にどのようなイメージを作っていくか、どのように共感を得て行くかというのは重要だし、ここを間違えたりおろそかにしたりすると、次の1歩が難しくなっていくのだ。
とは言うものの、“イメージ作り”という視点からはこのように見てしまうけれど、それでもやはりイメージというものは、その心の中や本心というのが垣間見えて造成されるものであってほしい、と私は思う。