2011年7月21日

現場とシステムの乖離

私が普段利用する金融機関は都市銀行が中心だが、ちょうど郵便局に行く用事があったので、ついでに通帳記帳をしようと郵便局のATMを利用した。2冊の通帳のうち、1冊(定期)を入れたところ「この通帳はお取り扱いできません。営業時間内に窓口に・・・」という表示が出た。少し混んでいたのだが、郵便局にはあまり行かないし、営業時間内だったこともあり、そのまま窓口で待つことにした。
店内には、年老いたおばあちゃんが車椅子で待っていた。その近くの窓口では、お客さんが不満を訴えていた。どうやら、そのおばあちゃんの口座のお金を動かすのに、本人確認が必要で、そのために家族がおばあちゃんを連れてきたようだった。が、その手続きが今回だけではなく今後もあるようで、おばあちゃんはいつも外出可能なほど体調がいいわけではなく、毎回おばあちゃんを連れてくるわけにはいかないからどうしたらいいかを、その人は聞いていたようだった。しかし、郵便局は委任状は半永久的に有効なわけではないこと(いつまで有効とも言えないが)、書類は本人が書かなくてはいけないこと、意志表示ができなければ医師の証明書(?)が必要なこと、などを丁寧に説明していたが、それらはどう考えても現実的ではなさそうだった。お客さんも、じゃあ認知症だったらどうなるのか?脳梗塞になれば代理人でもいいのか?などと食い下がっていた。おばあちゃんは多少認知症になりかかっていて、体調もよかったり悪かったりを繰り返す状況らしかった。例えおばあちゃんが意思表示できたとしても、日によって状況も違うことや事情を説明して、その人がお医者さんに診断書を書いてもらうなどできないこともないだろうが、そのお客さんはまじめそうでそういう発想はなさそうだった。郵便局側も、窓口担当の人はかなり丁寧に対応しているものの、ルールだからどうしようもない、という様子だった。
そのうち、私の順番が来た。窓口が言うには、通帳に記帳すべき内容はないそうで問題ないとのこと。システム上、そういう表示が出てしまう、申し訳ないが気にしないでと。これだけを聞くために、私は30分以上待っていたのだ。「記帳はありません」と表示されさえすれば、何も問題はなかったのだ。「営業時間内に窓口へ」とあれば、窓口に行かねばなるまい。
おばあちゃんを連れて問い合わせしていたお客さんの件も、私の件も、窓口の担当は実に気の毒だ。システムやルールが現場に合っていないため、顧客に不愉快な思いをさせてしまうのだ。私の場合は大した問題ではないが、それでもやはり不愉快である。振り込め詐欺など事件が多いだけに、金融機関の臨機応変な対応が難しいのは理解できるが、あまりに杓子定規だ。現実に即していないルールは、現場で混乱を生むし、顧客も離れていくだろう。
私自身も、都市銀行だったらこんなことはないように思ってしまった。「だから郵便局は嫌だ!」と。郵政民営化とは言え、まだまだ民間企業並みのサービスには程遠いようにも思う。
しかし、金融業界に限らず、どこの業界であったとしても、現場に即していないルールやシステムは、顧客離れにつながるし、命取りにつながると感じさせられる出来事だった。