2016年4月2日

チューリップ1本で人生のお話を聞く機会をもらいました。仕事のこと、好きなこと・・・


もうすぐ咲きそうなチューリップを2本いただき、
こんな風にレジ袋に入れた状態で手持ちして電車に乗りました。


年配女性が目の前に座っていました。
お楽しみの買い物をしてきたと思われるいろいろな荷物が詰まった大きなカートが足元に置かれていました。
その女性の隣の席が空いたので座ったら、
私の膝の上のチューリップをじ〜っと見ていらっしゃいます。
その視線で、チューリップがお好きな感じがしたので、
「2本あるから、1本さしあげましょうか?」と思わず声をかけましました。

はじめは固辞されていたのですが、
「いいんですか?嬉しい!ありがとう。」と言って受け取り、
その女性はご自分のカートに粋に差してから、お話を始めました。

かつてフラワーアレンジの仕事をしていたのだそうです。
ホテルの宴会場のテーブル装飾など。
いろいろなホテルの名前やお部屋の名前が出てきました。
個人で複数の名だたる一流ホテルでの仕事を頼まれてやっていたようでした。

こんな一流と仕事ができるんだからそれでいいだろ?って、
お金はもらえなかったこともあったとか。
当時はそんな〜!悔しい!と思うこともあったけど
今考えると、お金じゃ買えないくらいのことだったのかもしれない、
個人でそういう機会をもらえたというのは、ありがたいことだったんだなあ、と。

だけど今は何でもシンプルが一番。
ホテルもかつてのようなそういう装飾はほとんどしないのだそうです。

 私が辞めた後に誰かがやってたら憎らしい、と思ったかもしれないけど、
 そういう事は無いんですって。
 なんでもシンプルって···、どうなのかしら、ね〜!

かつては豪華絢爛なオペラが好きで、ヨーロッパにオペラを見に行くのが楽しみだったそうです。
ドイツのオペラハウスの会員で、定期的に行かれていたとか。

 今のオペラは演出が理解できない。
 綺麗なのが私は好きだったけれど、これも時代なのかしら。
 会員制もなくなったから案内も来ないし、もう行かなくなってしまった・・・。

てもそうは見えませんでしたが、今、90歳だそうです。
お元気でしっかりして、早口でお話をされていました。

「私、オペラを見たことがないんです···。」

私の言葉にその方は、

 まあ!もったいない。
 教えてさし上​​げたいわ〜。
 いつかどこかで会えたらね··~

そう言って、電車を降りていきました。

私は、こういう年長者が話す仕事の話やお楽しみの話を聞くのが大好きです。
お話の真偽のほどはわからないけれど、
そこにあるであろうドラマを想像し、その方の人生を想像しながら、
ああ、誰にもみんなドラマがある、としみじみ思い、
「人」への愛おしさを感じるのです。
そして、年長者のお話は私自身の未来を思うきっかけだったり、糸口だったり。


きっかけになったチューリップは、お寺でいただいたものでした。

お寺の横に並ぶチューリップ
毎年たくさんの球根を植えて育て、蕾をつけたチューリップがずらっと並ぶのだそうですが、
ご住職の吉田尚英さんは、

 蕾になったら、あとはどうぞおいでになった方が切って持ち帰ってください。

 ここまできたらもう開くだけだから、楽しんでください。

そう言っているのだそうです。

私はその言葉に感動していただいてきたのですが、
そんなチューリップがこんなお話を聞く時間をくれました

私が持ち帰ったチューリップはまだギリギリ開きそうにありません。
あと数時間できっと満開になることでしょう。