2014年11月3日

いい会社とは、会社を辞めた人を温かく見守れる度量があるかどうか

いつだって、どんな立場だって、育てる立場からすれば、一生懸命育てても辞められちゃうときの辛さは大きい。
私も会社員時代は何人も何人もそういう人を見送ってきた。
私がいた会社では、社長はどう思っていたかは知らないが、社員は、たぶん上司も、辞めた人を罵倒したり責めるようなことはなかった。
辞められるのが平気というわけではない。
そりゃあ育ててきたのだから、辞められるのは残念なだし、寂しいし、がっくりくる。
けれど、辞める時には大勢で送別会を開き、これからの未来を応援する雰囲気を漂わせたいい会社だった。
私もそうやって見送ってもらった。それは今でも大きな宝になっている。

なぜその人は辞めちゃうのか?!問題はここにある。
会社に不満があったのか、育て方が悪かったのか、それとも給料が悪かったのか、それとも・・・
私のように、会社が嫌なわけじゃなく、仕事がイヤじゃなく、でも無謀にも他のことがしたくなったから辞める人だっている。

そういう気持ちで辞める私としては、辞めた後も会社といい関係を続けたいと心から願い、そこはそれなりに心を配った。
辞めて7年にもなるので、今でもいい関係と会社の方々に果たして思ってもらえているかどうかはわからないが、年に一度くらいはかつての上司や同僚、後輩とそれぞれ会う機会を設けている。
でも私の知っている社員も次々退職した。
先に辞めたくせに言えた義理ではないが、よく知る社員の数が減っていくのは、やっぱり寂しい。

誰にだって会社を辞める権利があるのは当然だが、できればあたたかく見送ってやりたい。
見送ってほしい。
たとえ内心は悔しくても、だ。

それがオトナの度量というものだし、力ある者はますますそうありたい。
そうあってほしい。

なのに、こちらの社長さんはちょっと残念なことをやってしまった。

私が退職希望者に「激怒」した理由 (藤田晋氏の経営者ブログ) 」

私のいた会社とはレベルも質も全然違う。辞め方もずいぶん問題ではある。
書けない事情もいろいろあるんだろう。
怒る気持ちはもちろんわかる。
それでも、残念なのは、「社長が怒っている」という噂が社内に拡散するよう、意図的に怒ったということである。

さらにそれをまるで公開処刑のようにメディア上に掲載したということ。
お金も立場も名声もある人だから、その影響力は計り知れない。

社員が辞めるなんて日常茶飯事だとあっさりと吐き出すような物言いも残念だ。
人を大事にしない会社とみられても仕方がない。

ここは逆なんじゃないだろうか。
競合会社に行ったというその社員を、失礼千万でありながらもここは意図的に度量の大きさを見せればいいのに・・・。

うちの経験を社会で生かしてもらえればいい。
残念だけど、いずれ、辞めなきゃよかったと将来思われるよう、ますますいい会社にしていきたい。
うちで培ったスキルでもしも大物になったら、一緒にビジネスができるといいね。

・・・どうせ公開するんであれば、それぐらいの度量の大きさを見せてしまえばいい。
どんなに失礼な辞め方なのかは知らないが、社内の人にはますます度量が大きく見えるはずだ。
よくある社員の退職に、いちいちそんなことは言ってられないかもしれない。
けれども、こんなふうに意図的に怒るよりはよっぽどよかったのではないだろうか。

失礼な彼を多少は応援する姿勢くらい見せて、そのうわさが社内に拡散した方が会社の雰囲気も、社長のイメージもずっと良かったんじゃないかと思う。

そんな風に思う私は、甘いだろうか。

私がこの記事を知ったきっかけになったのは、かさこさんのブログだったのだが、驚いたのはかさこさんの見解だった。
プロジェクトを途中で投げ出されたくなかったら、フリーを使えばいい
社員はいつ辞めようと勝手だがだが、フリーは途中で逃げ出さないから、と。

確かにそうなんだけど、会社の重要なプロジェクトはやはり信用できる社員というのが暗黙の了解ではないだろうか。
社員が投げ出さないなんて、もちろん何の保証もないのだけれど、社外だと秘密漏えいなどの不安があって出せない、というイメージが一般的な企業ではないかと思う。

でも、きっともうそんな時代は終わったんだ。
正社員のほうがいいというのは心え情的なことであって、今や運命共同体の会社などないし、心情的なものを支えているものがなくなった今、こんなに不安定なことはない。
お金で解決し、責任の所在を明確にする方がはるかに今っぽい。明快なのだ。

でも私はどこか心でつながっていたいと思っている。
会社を辞めようが、辞められようが、陰ながら互いに応援しあえる関係、たとそれで裏切られたとしてもグチグチなど言わない・・・そんな会社と社員の関係であったらいい。
もし会社に勤めるのであるならば、そういうトップのもとで働きたいと思うし、そういうトップの会社を人には薦めたい。