今ではお盆など関係なく、夏休みは交代で取得するのが普通と言われますが、
13日に車で出かけたら、道はガラガラでした。
だって、お盆。
13日はご先祖様をお迎えする日ですものね。
私のお盆、今むかし
子どもの頃、お盆になると同居している祖母と一緒に迎え火を焚いた。祖母がナスとキュウリを選んで割り箸を差すのを横で見ていた。
こうやって馬を作るのだという祖母の言葉を聞きながら、
こんなの馬になんか見えないよなあなどと思いながら、
意味もわからず火を焚いた。
それから何年か経ち、就職し、実家を出てからは
私にとってお盆と言えば夏休み。
取引先の休みが増え、仕事が暇になり、通勤電車が空き、
都内の道がガラガラになるイメージが濃くなった。
私にとってのお盆などそんなものだった今から20年くらい前。
勤務先の社長が、得意先の中でも新盆にあたる人に提灯を贈ろうと
言い出したことがあった。
それも、直接ご自宅にお届けしよう、と。
え~?! 提灯? 自宅に届ける~?
当時、その得意先の担当営業はそれをいやがった。
「提灯なんかもらっても迷惑だろう」と。
若かった私は、随分前時代的な古臭いことを社長は思いついたもんだな・・・
と思ったのをよく覚えている。
結果として提灯を贈ったのかどうか、どうやって贈ったのかは
忘れてしまったが。
お盆を意識するようになって・・・
若かった頃は、お盆などあまり意識することもなかった。それが、数年前に義理の父が亡くなったことに加え、
それからほどなくして終活や供養の周辺の人とのつながりや仕事の機会が増え、
少しづつ私の意識が変わっていった。
単なる夏休みではなく、少し気にするようになったのだ。
それでも東京での暮らしの中でお盆を感じることはあまりなかった。
昨年のお盆のとき、スポーツクラブで気になる会話が耳に入った。
20代の女性トレーナーが顧客の中高年女性に、
「明日はご先祖様をお迎えに、提灯持ってお墓に行かないと・・・」
と話していたのだ。
我が家では迎え火を焚いてご先祖様をお迎えする、とは聞かされていたけど
実際に迎えに行くことはなかった。
うちのお墓は北陸なので迎えに行くには遠すぎたということはあるかもしれないが、
そんなことは聞いたこともなかった。
気になってあとでその女性トレーナーに聞いてみると、
離れた地方の実家の話ではなく自宅の話で、場所は東京と埼玉の県境だった。
お墓も地元、古くからその地域に住んでいる家だそうで、
家族や親せきみんなで提灯を持ってお墓にお迎えに行くのだと言う。
今でもやってるお盆の風習
一昨日、車で出かけた際にその話を思い出し、その地域の方に回ってみた。そうしたら・・・
灯を入れた提灯を持ってお墓から帰る人たち |
子どもからお年寄りまでの大家族の人、夫婦二人だけの人、
次から次へと提灯を持ってお墓にやってくる。
お墓参りに来た人同士で声をかけ、挨拶をし合い・・・、
そして、灯を入れた提灯を持って家族揃って帰るのである。
あたりはお線香の匂いでいっぱいだ。
聞いた話は本当だった。
最近になって、東京周辺でも昔からそこに住んでいる人たちが多い地域では
お盆でそのようなことをしている場所がいくつかある、
ということを知った。
今、改めてお盆を眺める
このような風習は地域独自の文化らしく、地域によって違うようだ。東京に暮らす人たちは、地方から来た人たちの寄せ集まりで、
かつてはきっと長男が本家を守るから地域に残り、
分家になる人たちが都会にやってくるケースが多かったのだろう。
祖父母から親へ、親ら子どもへと代々伝えられるのは、
東京の風習ではなく故郷の風習であったりする。
だけど今、私の家の近所のスーパーでは、
お盆の時期になるとお盆飾りのナスとキュウリの詰め合わせがパックになって店頭に並ぶ。
青森の新興住宅街に住んでいた友人に聞けば、
お盆になると、家の前の道に出てナスとキュウリで馬を作り、迎え火を焚いていたと言う。
それも、彼女の家だけでなく、道にはそういうことをする家が点在していたそうだ。
私にナスとキュウリの馬を教えた祖母の家は北陸で、お墓も北陸だが、
東京に住む長男の父が両親(私にとっては祖父母)を東京に呼び寄せたのだ。
その習慣は北陸でやっていたものだったのだろうか。
それとも、遠く離れたから本来の習慣とは違ってやっていたのだろうか。
祖母が亡くなった今となっては、わからない。
SNSでタイムラインを眺めると、いろんなお盆の迎え方があることを知る。
家族親戚が集まってご先祖様をお迎えし、みんなでご馳走を食べる人たち、
仏壇周りにお盆飾りをする家・・・、
今も変わらず続けていることを知り、
約20年前に、もうそんな時代じゃないよ、時代はすっかり変わったんだから、
などと思っていた若かりし頃を思い浮かべ、そんな自分に苦笑いする。
確かに時代は変わったけれど、変わらないことや変わらない人たちがいる。
そこに私は憧れや羨ましさを抱き、そういう風習に込められた意味に
大きな興味を感じる。
それでも、私の周りにはお盆なんか関係なく仕事をする人もたくさんいる。
世の中はお盆真っ最中。
今の時代、東京の人はどんな風にお盆を過ごすのだろうか。