2012年10月1日

「お年寄りの顔を輝かせたい」 高齢者アートの発表会

右側のサイドバーでも下の方でも紹介しているが、私が提供している新サービスの一つに、「大人の発表会」がある。

「大人の発表会」とは、自分の趣味などを披露する(=人に見てもらう)こと。
子どもの頃にワクワクドキドキした学芸会やピアノの発表会。
学生時代の文化祭。
誰もがきっと経験したことがあるだろう。
その準備と当日は、充実感たっぷりで夢中になったに違いない。
大人になって、家族ができたり、仕事が忙しくなったりして、そういうことは忘れがちになり、遠くに置き去りにしてきた人も、“いい大人”になった今こそ、大人ならではの披露する場や自慢する場を作り上げてみよう!と提案し、その会場探しやプロデュースを行っているのだ。

「大人の発表会」のネタは、大人になってから始めた趣味、若い頃からずっと続けてきていること、ひたすら集め続けてきたコレクションなど、なんでもありだ。
発表会自体が面白いことはもちろんだが、人に見てもらう場を作ることで、旧交を温めながら楽しいお酒が飲めたり、疎遠な人との再会が実現したり、家族や親戚などを集めてファミリーの絆を再確認できたり、と副次効果も捨てがたいものがある。
これは個人個人の幸せにつながるものと思い、私はこれを普及させたいと考えて始めたのだ。

この「大人の発表会」で、9月10日~11日、東京・池袋でアートの作品展を開催した。
とは言うものの、この作品展は趣味の披露ではない。
発表者がライフワークとして開発に取り組んできたアートの披露。
趣味を披露する、という元々の「大人の発表会」主旨からは少しはずれるものだったが、お年寄りの幸せにつながる作品展だったので、やはり「大人の発表会」だ。

高齢化社会は今に始まったことではなく、社会問題としてどんどん深刻化している。
この作品展開催に当たっての背景は、考えさせられることが多いので、少し紹介したい。

発表者は、看護職として介護現場での15年の経験がある長瀬教子さん。
デイサービスや老人ホームなど、要支援・要介護のお年寄りが通う(または居住する)施設に働く職員にとって、お年寄りにどのように時間を過ごしてもらうかは大きなテーマだという。
子どものようなぬり絵や工作、脳トレと称した簡単な計算問題などが提供されることで、お年寄りの尊厳を損なうこともしばしばだそうだ。

お年寄りの「子どもじみていてイヤだ」「こんなことはやりたくない」という声。
一ついいことを取り入れたとしても、同じことの繰り返しはできず、さて次はどうしよう?と、職員にとっては常に精神的に追われている。
限られたコストの中で、いかに気持ちよく過ごしてもらうか。介護に関するスキルはあっても、お年寄りにイキイキ過ごしてもらうためのスキルは、職員個人にゆだねられがちで、現実は厳しい。
誰にでもできるような均一な手作業への不満が、意欲低下や認知症につながっていく様子を、間近で見ている職員の苦悩は大きいそうだ。

そういう中で長瀬さんが注目したのは、不用品を活用するアート。
それも出来栄えが上質で実用的なもので、種類が無限大なのでネタ切れせず、お年寄りも職員も飽きることがないもの。
しかも要支援や要介護のお年寄りでもできるようなものを、オリジナルアクティビティとして長瀬さんが開発し、自ら勤務する施設で取り入れたのだ。
その結果、そのアートにイキイキと取り組むお年寄りが増え、お年寄りの顔が輝くようになり、それ自体がハリとなっていくようになったことから、少しづつ近隣施設(埼玉県内)にも導入されるようになった。



そこで、自らが開発したアートの多様性や、種類の豊富さを一堂に見せる場を設け、より多くの人に見てもらいたいが、どうやって進めようか?と考えていた時に「大人の発表会」と出会った。それから都内での作品展開催を考え始め、「大人の発表会」として協力させていただくことになったのだ。

開催直前には、新聞にも記事が掲載された。

作品展を開催したところ、おいでになった方は、とても熱心だった。
説明を聞いたり、作り方や材料セットを買い求めたり、さらに学びたいという人も出てきた。
現場の職員が抱える悩みを、施設の経営層はどこまで知っているだろうか?

この作品展の様子は、「大人の発表会」サイトでも写真とともに掲載しているので、介護関係に関わる方々にはぜひ知っていただければと思う。


付記1)
10月16日、日本経済新聞(夕刊)で、掲載されました。



付記2)
11月10日、日本シルバー産業新聞にてカラーで掲載されました。