2014年10月20日

中小企業の方が社員の勤続年数が長い理由と、転職する理由

終身雇用が崩壊したと言われて、どれくらいになるだろう。

私自身は、新卒後ずっと一つの会社、それも大企業ではなく中小企業に勤務し続けた。
バブル崩壊直前にはより高い報酬の話が見え隠れすして次々と同僚が会社辞めたので、会社の中は浮き足だった。私自身も転職を考えたことがないと言えば嘘になるし、同僚が引き抜かれて会社を辞める時には、羨ましい気持ちがなかったとは言えない。

それでも、もし自分が退職するんだったら、それは転職ではなく自分一人で何かする時・・・おぼろげにそう思っていた。
その会社は60年近く前の創業時から男女の給与体系が同じだったこともあり、当時他の会社に比べて確実に女性の未来が明るく見えたことも、女である私には大きかった。

だから私は転職の経験がない。

オールアバウトの特設サイト「国民の決断」で実施した「転職」に関する意識調査は興味深い。

男性の場合、大企業勤務者よりも中小企業勤務者の方が勤続年数が長いのだと言う。
レポートを見ると男性についてのみ記述されているが、男性ほど顕著ではなくても、女性もそういう傾向がある。
(調査はインターネット調査で、対象は20代~50代、男女比も年齢比もほぼ均等)

レポートでは、中小企業では一年未満など短い期間で退職をする人と、10 年以上長く勤める人と、二極化するからではないかと推察しているが、果たしてそうだろうか。

企業にもよるとは思うけれど、働く面白味ややりがい、トップ(や上司)の考え方や情熱等は、大企業よりも中小企業の方が満たされやすいことはないだろうか。
企業が大きくなると、自分が何のためにその仕事をしているのかがわからなかったり、役立っている実感が得にくかったりすることはないだろうか。

中小企業の場合、組織が大きすぎないので、経営陣との接点は持ちやすい。
叶うかどうかは別にしても、希望を伝える機会もある。
叶えたかったら、いろいろな手を尽くす。
仕事の規模が大きすぎないので全体像が見えやすい。
忙しいので、多少経験不足でもどんどん任せてもらえる。
・・・私の場合は、そういうことが当時は比較的満たされていたから、転職を考えることなく、ずっと勤務していたのだと思う。

もちろん中小企業であっても、自分の仕事がどのように成果につながるのかが社員自身にわかりにくかったり、役立っている実感が得にくかったりするような企業も多いので、そういう場合はきっと勤続年数が短くなるのではないだろうか。

転職理由のトップは「給料への不満」。
そりゃあそうだろうが、人の気持ちは複雑怪奇。それだけではないはずだ。
気持ちが満たされているかどうかが、まずは大前提だ。

「給料への不満」の次が、男性は「自身のキャリアアップのため」。
女性は「職場の人間関係」。

結局のところ、転職する理由は未来に希望が持てるかどうかということに尽きると思う。

今の給料への不満があっても、将来の給料に夢が持てれば我慢できる。
人間関係だって、期限付きなら耐えられるのではないか。
「自身のキャリアアップ」などは、まさに未来に向けての話だ。

現在、やりがいがあって仕事に満足していれば転職は比較的考えにくいが、
会社の未来、自分の未来を考えたときに希望が持てるかどうか。
自分の5年後、10年後が描けるかどうか。
産業としての未来が明るいか、仕事の未来は開けているか。
自分のやりたいことができそうかどうか。

社会構造や機械化、IT化が進み、人々の嗜好や価値観の変化は、
今まで以上に速い。
明るいはずの未来が、そうではなくなることだってある。
会社も人も、未来に向けての多様性や柔軟性が益々求められるようになる。

大企業は今まで以上に人がいらなくなるから、大企業を目指すのはいよいよ狭き門だし、終身雇用で運命共同体だった時代は、大企業にいさえすれば安泰だったが、今は大企業だってつぶれないとは限らない。

日本の企業のほとんどは中小企業なのだし、これからの時代はますます中小企業の価値が認められてもいいはずだと思う。
中小企業を盛り上げることこそが、今求められていると思うのである。