美味しい豚肉で数年前から話題のTOKYO-X 。
総会と合わせて、10周年記念講演会があった。
出席者の一人、服部幸應先生の話でいいくつかおもしろい内容があったので紹介したい。
服部先生と言えば、今は料理評論家にとどまらず、食育提唱者としての位置づけも大きい。
その主張は、
「(食べ物を)選ぶ力」
「(食べ方など食の伝承の源の)家庭力」
「(地球規模でみた)食糧事情」
を3本柱とする。
中でも家庭力のエピソードは興味深かった。
かつて誰もが知っている桃太郎や赤ずきんちゃんなどの童話だが、今の大学生で知っているのはわずか1/3。読み聞かせなど親から受け継がれてきたはずのお話のはずが、それがなくなっているのだという。
テレビを見ながら食事をするという行為は、日本は世界的に見て驚異的に多いそうだ。欧米ではテレビをつけっぱなし及びつけたり消したりを含めて、全体の1/3以下というのに対して、日本は60%以上。しかも欧米は、教養のない層がそれに当たるという。
かつて大学の講義をすると、受講者たちは講師の話にうなづくなどの相づちを打つ人が相当数いたのに、最近の大学生は相づちを打つ人がいないことも関係しているのかも、という話があった。学生は聞いてるんだか聞いたいないんだかわからなくて講義をするのが嫌になるそうだ。
そもそも親の務めというのは、ヒトも動物も子どもがひとりで生きていける(食べていける)ようにさせることなのに、それがなされていないことがなげかわしい、という。
まさに親の助けなしに一人で生きていけるようになる、これこそが大人になるということなのだと思う。そう考えると、「食育」ではなく、「生育=生きるための教育」なのかもしれない。
しかし自分自身を振り返ると、私が実際に大人になったのは20歳ではなく、30歳を超えてからのような気がする。
服部先生のお話も、確かに「食」に起因している面はあるだろうが、どの話も決して食育に限った話ではないような気がする。
私がかつて大学性の頃、まだ「食育」という言葉はなかった。しかし卒業研究で入った研究室の教授が「食教育」を提唱し、「食べ方」について研究していた。今の食育の礎だ。その教授が、当時誰も注目していなかった個食に注目していた。その考え方は、大いに共感できる。
最後に、食料需給率の問題として国内の需給率はよく議論されるが、都道府県内の需給率をみると、東京都はわずか1.2%。最も高いのは北海道で190%。関東でも千葉、埼玉、茨城などは70~80%。
自分自身の食料購入を考えると、うなづける話でもあり、耳が痛い。
蛇足だが、講演で次々と出てくる各種データ、数字・・・。服部先生は何のメモを見ることなくすべるように話していた。こちらがメモできるようなスピードではなかった。食事中のテレビ視聴は5~6カ国、都道府県別食料需給率は7~8件など。話の内容もさることながら、その記憶力にも感服しました。