現在、ファッション関係クライアントに対して、冬のボーナス商戦に向けてのテレビスポット投下キャンペーンの提案準備を進行中だ。
テレビの広告効果が年々落ちていることは、このブログでもたびたび書いてきたが、それでもプロモーション手法の一つとして、そのクライアントがテレビを一切使用しないことは非現実的だ。たとえ効果が薄れているとはいえ、それでも確実にテレビ効果はあるので、無視はできない。どこのクライアントにとっても費用対効果が重要なわけで、広告予算としてテレビが高額だから問題になるのだ。たとえ高額でもそれに見合った効果があればいいわけだが、この効果に対しては高額すぎる、となるからテレビの広告効果が落ちてきていると言われるのだ。
昨年のリーマンショック以来、どこの会社でもコスト削減を行う中で、高額なテレビ広告はその削減対象になってきた。車業界、家電業界が大幅にテレビ広告を減らしたのは、日々テレビを見ていれば誰の目にも明らかだ。
民放テレビ局は、広告費を収入の柱とした事業スキームであるだけに、広告主のテレビ広告予算削減は死活問題だ。つい数年前には、テレビ広告を実施したくても枠がなく実施できなかった時期があったことなど、今や信じられないくらいだ。当時はCMを打つための枠取り合戦だったのが、今や需要供給バランスに各局の獲得戦争が加わり、どんどん値崩れを起こしているのだ。
クライアント側は費用対効果から、当然のことながら少しでも安く抑えたいというニーズがあるわけで、料金交渉は熾烈なものになってきた。2009年になって以降、テレビスポット投下コストの交渉は、毎回値下げ交渉。かつてテレビスポットのコストは実績重視で、毎年テレビ局から値上げ要請が出てきた。こちら側としてもクライアントにその値上げ経緯や理由を説明し、クライアントに納得してもらうための交渉をしなくてはならなかった。そのことを思うと、時代の移り変わりを痛感する。需要供給バランスと競争原理の中で、クライアントの要求が厳しいのは当然だし、クライアントに提案するこちら側としては、値下げ交渉のみならず、サービス付加まで交渉(要求)することになる。こちら側にとっては、クライアントのために動いているわけだから喜ばしいことであるのは間違いない。しかし毎回毎回このような交渉をしながら、テレビ業界のことを思うと、今後どこまで値下げ交渉が可能になっていくんだろう、と空恐ろしくもなる。
今後、景気が上向き、テレビ広告の需要供給バランスがまた変わったときには、テレビ局から値上げ要請される日が来るかもしれない。しかし、クライアント側の考える費用対効果のバランスに見合うだろうか? かつてのようなレベルの値上げは、もはや承服できなくなるだろう。この1年でそれを十分に検証してきたわけだから。その時、テレビ業界の事業スキームはどのように変わっているのだろうか。