出版系の仕事に関わったことがきっかけで、出版企画を検討し、出版社に持ち込む機会があった。出版不況で本が売れないといわれる時代だが、それでも書籍ン御信頼性は高い。私は、出版社の負担をできるだけ減らし、安く作りたいと思い、しかも自分自身がほしいと思う本を提案したいと考えていた。
提案したところ、企画のおもしろさを理解してはくれたものの、即実現、とはなかなか進めにくいことになった。ここ数年で人は本を買わなくなり、特に若い人は、だいたい携帯で情報入手を済ませ、お金を出して本を買うことはない傾向に、出版は強い危機感を持っている。そのため、読者の「深刻なニーズ」に対応する書籍でないと、大手出版社ですら出版に対してとても臆病になっているような印象を受けた。「深刻なニーズ」に対応するものは、例え読者数がわずかなであっても、その人にとっては深刻なので、「お金を出して本を買う」行為につながりやすいというのだ。その通りだろう。けれども、例えば命に関わるような「深刻なニーズ」に対応する本ばかりが増えていくことを想像すると、私はなんともさびしい気がした。
出版社は、出版にあたっては今まで以上に売れるかどうかを厳しく精査する。当然のことながら、私の企画自体の弱さが大きいのは否めない。
現在の出版不況の厳しさを改めて感じるとともに、例え「深刻なニーズ」でなくても、豊かで楽しい気持ちになるために「お金を出して本を買いたくなる」ような出版企画をさらに練り直したいと思う。