私は、この春からある広告代理店の業務委託を受けて若手営業マンに対するアドバイスを行っている。若手営業マンとはキャリア3年以下の20代前半であるが、知識も経験も浅いので、少しの手助けや指導で、想像以上に効力を発揮し、日々成長するのを見るのは、私にとっても嬉しく意義深い。
その仕事を通じて、言葉のチカラや意味を理解する必要性を改めて実感する。
彼らはキャリアが浅いとは言え、広告業界に身を置くようになって新たに覚えた業界用語が、時とともに日常の言葉になってくる。それは、その言葉が業界だけに通じる言葉であることを忘れて行く危険性と隣り合わせだ。さらに深刻なのは、普通にその言葉を使いながら、その言葉の本当の意味を理解できているかが、私から見て微妙な気がすることだ。
専門用語に限らず、ビジネス用語などでも、本当の意味が曖昧なままに使用しているシーンには、一般的にしばしば出会うことがある。「効率的」「効果的」広告業界なら「イメージアップ」など、よく使われる言葉だが、どういう意味で「効率的」なのか、何と比べて「効果的」なのか、どんな「イメージアップ」なのか? それが相手にどこまで伝わっているのか? 例えば、「効率的」「効果的」「イメージアップ」などは、とても便利な言葉ではあるが、言っている本人がどこまできちんと消化して使っているのかどうか、疑問に思うことは多い。言葉を安易に使ってはいないだろうか?
昨今の学生時代から続くコピペ(コピー&ペースト)文化が、もっともらしい言葉を身近にするうえで大きな役割を果たしたと思うが、結果的に言葉を理解しないまま使う方向に向かわせたことで、結果的に思考停止になっていきかねないのだ。
日本語に堪能な外国人と日本語で会話をするときに、気の置けない相手だと、ちょっとした世間話であったとしても、「それはなに?」と突っ込まれることが少なくない。そういうときに、その日本語独特の表現について、言葉の意味を説明しようとするのだが、これが本当に難しい。その言葉の本質を理解しているかどうかを、自分に突きつけられたような気がするし、自分自身の理解の甘さにうんざりすることもある。
難しい言葉で言うのは簡単だが、平易な言葉で言うのは難しい。本質まで理解していないと、平易な言葉にはできないからだ。
だからビジネスの場面においても、難しい言葉でもっともらしく説明するのは、場合によっては物事を理解していない証拠でもあるのだ。