2012年3月6日

「働く」という意味

「会社は何のためにあり、社員は何のために働くのか? それは仕事を通じて世の中に役に立つためだ。」
これは、資生堂副社長の岩田喜美枝さんの言葉である(2012.1.5読売「日本あれから 幸せの座標1回目)。

昨年12月から、私は知人からの依頼がきっかけで、「自分のキャリアを考える勉強会」を数回主催した。
私自身は、元々は本来キャリア形成の専門家ではないが、長年働いてきた中で、結局のところ自分自身の働く意味を曖昧にしていると、どんなに働くことが好きであったとしても、働くことが苦しくなる時期にぶつかる、という実感があった。もちろん、その「働く意味」というのは人によって百人百色。
誰もが自分自身の意味を考えることで、イキイキと働けるはず、そうすればイキイキと生きていけるはず。
私はそう考えて、各々が自分で納得できる回答を探したりみつけたりするための勉強会のプログラムを考えたのだ。
構成してみたら、それは、「働く」ことには限らず、「生きる」ことを考えることに近くなった。
自分が「働く」という意味は、自分がどんな時に満足感を得るのか、幸福感を得るのか、ひいてはやりがいや生きがいを感じるのか、ということに大きく関わってくるからだ。

その勉強会では、「キャリア」を必ずしも「報酬を得る仕事」とはとらえず、「あらゆる活動」と定義づけた。ボランティア活動も家事も含むいろいろな活動だ。
自分に何ができるか、周囲は自分に何を求めるか、
それまでの自分の人生を振り返り、自分の価値観を改めて確認する、
他の人とどこが違うのかを認識する・・・
勉強会では、各自がそんな作業を、いろいろなきっかけを与えるワークを通じて繰り返す中で、自分が働く意味や、これからどういう働き方をすることが自分にとって心地よいかを探す、どう生きて行くかをみつける。
漠然と思ってはいても、なかなか深く考えることのないテーマだ。

勉強会のスタート時には先が見えない不安を持っていた人が、その不安の本質を発見し、自分の目標を設定していく様子が、まさに目の前で展開されていった。
おかげさまで、毎回終了するたびに参加者からはご好評をいただいたが、私自身も得るものが大きかった。
とは言うものの、私はこれが本来の専門ではないのでいったん終了するが、自分自身のためにも、この勉強会は年に1度くらいは開催していこうかと考えている。

価値観の多様化、自分らしさを大事に、などは世間でよく言われることではあるが、それを自分の問題にして具体的にどう対応するのかが実に難しい。
今の時代は、これをつかめないとなんとなく幸せじゃない気持ちがずっと続いてしまうのだと思う。
この状態は、個人にとって不幸なことはもちろんだが、その個人がやりがいをもって働けない状態であることは産業界にとっても不幸である。
さらに、そういう状態を解決したり、道筋を見つけるきっかけにできるような、研修事業ではない「何か」がこれからの時代の新たな商品として生まれないだろうか?と、私は考えてみたりする。
より多くの人がイキイキと生きていけることにつながるようなことが商品化されれば、世の中の幸福度も上がるのに・・・・
今回スタートした「アイ・フェイス i-face 」も、私の思いはそこにつながっている。

最後にその新聞記事にあった、印象的な言葉をいくつか紹介する。
「最近のキャリア教育のせいか、今の若者は、自分が役立っていることを確認できないと不安になる。上の世代に甘えと受け取られてしまう。」「働く意味を考える若者は、仕事への意識が高いとみることもできる。意欲を引き出し、若手がチャレンジできる機会を増やして行ければと思う。」(関西学院准教授、鈴木謙介さん)
「後に何かが残り、誰かが元気にする仕事がしたい」(元IT関連会社勤務38歳女)
「社会や人から感謝される仕事がしたい」(日本生産性本部・客員研究員の仕事に対する考えを聞いた質問で、96.4%とトップ)
「この3~4年で、出世よりも社会に役立つ仕事を望む学生が増え、震災でその傾向が加速。日常的な仕事も社会に貢献していることをなかなか理解できない面もある」(立教大キャリアセンター部長)