2013年10月29日

社会問題をわかりやすく考えさせてくれた天野祐吉さん、亡くなる 

80歳でした。

新卒からず~っと、20年以上広告会社で仕事をしてきた私にとって、天野さんは憧れの人でした。
広告を素材に社会を考える、という形が私は好きで、しかも広告に対してのスタンスが、時に優しく、時に厳しく・・・・。
天野さんの、広告への愛情があふれているのを感じました。
そこが元アドマン(=広告人)の私としてはなんとも嬉しく、また共感することが多かったです。
広告とは無縁の方でも、朝日新聞に連載されていた「CM天気図」で、そういうことを感じる一般の方もきっと多かったことでしょう。
そういう天野さんの柔らかさは、やはりお顔にしっかり表れているなあ、と思うのは私だけでしょうか。
特にここ10年くらいは、社会に対しての痛みや哀しみとともに語られることが多かったので、優しさの向こうにあるそういうお顔を、感じました。

なぜ売上目標は毎年毎年上がるんだろう? なぜ経済は成長せねばならないんだろう?と、私がこっそり考え始めたのは15年くらい前でした。
当時は広告会社の会社員で、仕事は面白いし、毎日ワクワクしているんだけど、それでも社内の営業会議に出ると、どこか腑に落ちないものを感じていました。
そういうことをいろんな人に質問すると、頭では納得するような答えをくれたり、叱られたりしながらも、心ではどこか納得できずに何年か過ぎたころに、天野さんがコラムで経済至上主義への批判を、誰もがわかるように、明るく、でもピリッと辛く書いているのを読み、とてもホッとしたことがあります。

朝日新聞(10月22日)では、CMディレクターの川崎徹さんが天野さんへの追悼コラムを書いていて、そこに1981年の天野さんの写真が掲載されていました。


「広告批評」が創刊されて2年後の写真です。
当時の広告業界は、多くの有名クリエイターが面白い広告を次々と作っていた時代で、就職する者にとっては人気産業。
大学生の憧れの職業でした。
その「広告批評」は2009年に休刊。

私が好きだった広告の時代の終わりを感じ、寂しいです。
ご冥福をお祈りします。