2013年10月4日

対抗するのではなく、ワクワクしながら共存

ニュース映像制作会社を辞めるに当たって、自分が会社で踊る映像を背景に上司への不満をぶちまけたビデオを作った女性、シフリンさん。
彼女が作った映像の再生回数が1,200万回を超えるほどの人気だ。
でも、私が注目するのは、この会社がそれに対応した作ったビデオ

SNSの時代、誰もが情報発信者で、その情報に興味を持つ人がいれば、その情報はどんどん拡散していく。
それが炎上したり、絶好なPRになったり、イメージダウンになったり、大きなダメージを受けたり・・・。

シフリンさんが作ったビデオでは、会社への不満、上司への不満を発信しているが、会社のいろいろな場所で自分ががむしゃらにダンスを踊る映像を背景にしているので、陰湿性は感じられない。
構成のセンスもいい。
厳しい労働環境で働く者から見れば、同情や共感を呼ぶだろう。

けれども、会社や上司から見れば困りものだ。
この映像を見た人から、とんでもない会社だと思われるかもしれない。今風に言えば、ブラック企業的イメージが定着するかもしれないのだ。
映像制作会社なだけに、いい人材を集められなくなっていく可能性もある。

会社の立場だったらどうするだろう。
シフリンさんを呼びつける会社もあるだろう。
お金を払ってでも、映像を削除するよう要請する会社もあるだろう。

でも、この会社はシフリンさんに対抗するのではなく、シフリンさんに返答するビデオを会社として制作したのだから洒落ている。
ビデオには社員全員が出演し、
デスクでランチを食べるのは、周囲にレストランがないからだよ、
会社には屋上プールやサウナもあるよ、
社員はみんなでシフリンさんのよき将来を願っているよ、
・・・というメッセージに乗せて、それぞれがシフリンさんの映像と同じように会社の中で踊っている。
その出演者が「私たちは、会社に雇用されている従業員だ」というメッセージを送りながら、人材募集ビデオとして完成している。
出演する彼らはとても楽しそうだし、そのダンスがあまり上手でないところも、嘘っぽくなくていい。

シフリンさんはこれで会社を辞め、その映像が話題になったおかげで、新しい仕事のオファーが来た。
今、この会社が制作した映像の再生回数の方は、まだシフリンさんの映像の1/6程度。
これから増えるかもしれないが、すでに新しい人材応募がいくつか来ていると言う。

もし、会社がシフリンさんへの対応を間違えたらどうなっていただろう。

シフリンさんは退職したけど、彼女と会社は、いわゆる、Win-Winの関係にある。
会社が制作した映像再生回数が、シフリンさんよりもどんなに少なかろうと、この会社に対するイメージが上がればいいし、いい人材が確保できればいいのだ。

これは、いかにも今の時代の会社PRの形だ。

対抗するのではなく、共存すること。
それも楽しく、ワクワクするような形で。

企業と従業員だけでなく、自治体と住民、家族関係、プライベートな人間関係等々、あらゆる関係性において、こういう対応ができるようでありたいと思う。