私が広告代理店でサラリーウーマンをしていたのは、7年前までのことだ。
広告業界で長く仕事をしてきた私から見ると、テレビの影響力は絶大だった。だからクライアントはテレビ広告をやりたいと思うのだろうし、広告屋としても、テレビコマーシャルを提案する。それを獲得するのは、広告マンにとっては大事な仕事の一つだった。
そうは言っても、テレビコマーシャルには莫大な費用がかかるので、ある程度の予算がないと展開することなどできない。展開できても継続的に出稿するには限度がある。
だから番組でも何とか取り上げてもらおうと、あの手この手を使う(=PR企画を練るって)のだ。
今、テレビの影響力はどうなのだろうか。
昨年発行した拙著「失敗しないエンディングノートの書き方」(法研)が発端で、エンディングノートを継続的に書いていく講座を、自ら主催し、4月より開講している。
この講座に、テレビの取材が入った。
今、世の中はエンディングノート講座が人気だと言う。あちこちで開催されている。が、私が行う講座は、相続や葬儀周辺の専門家視点とは少し違うかもしれない。どちらかと言うと、これからの生きかたに焦点を当てている。
私は、生きざまが表れる顔つきへの興味が強く、その究極が遺影だと考えたことからエンディングノートに出会った。改めてエンディングノートの中身を見ると、それは将来のなんとなく不安に感じることが項目になっていた。けれども書こうと思ってすぐに書けるようなものではなかった。
知識がないと書けないし、自分のことがわからないと書けないのだ。
実際、エンディングノートを知っている人の中でも、書いている人はごくわずかだ。
そこで、一緒に、少しづつ、学びながら、エンディングノートを書く講座を、4月にスタートした。
しかも、エンディングノートは、自分らしい生き方を考えるためにも有効なツールであるから、年齢を問わずに始めたら、参加者さんは30代~50代の男女だった。
テレビ取材されたのは、その講座の第2回目だった。
日本テレビ「NEWS ZERO」。板谷由夏さんのLIFEというコーナーだ。
私は、自分自身を考えられることに価値を置いていたが、テレビ局は若い世代が考える終活に注目したようだった。
取り上げられたのは時間にして約2分弱。広告費に換算すれば、驚くばかりの金額に相当する。
放映の翌朝、昔の勤務先同僚から電話をもらった。
「出てたね~、すごい反響でしょう?! 電話で仕事にならないんじゃない?」
現実は・・・・そんなことはない。
電話が鳴りっぱなしということもないし、問い合わせメールが次々入るということもない。
私は比較的交友範囲が広い方だと思うが、放映をきっかけに私に直接連絡をくれた人は、その同僚を含めてほんの数人にすぎなかった。
視聴率から考えれば、きっと見ている人はいるのだろうが、あえて行動しないのかもしれない。
たしかに放映日とその翌日は私のWebサイトのアクセスが若干上がったが、それもSNSを通じて訪れてくれた割合が意外に高かったのも印象的だった。
SNSで私や参加者さんが放映に関連した投稿をしたからだろう。
かつての「AIDMAの法則」が、「AISASの法則」に変わったと言うが、今やAISASも不確かなように思えた。今の時代はさらに情報が溢れかえっており、よっぽどのことがないとアクションすら起こさないのではないだろうか。
それでもSNSのように、知り合いから聞いた話なら見てみようかな、と、軽いアクションを起こす~そんな風に感じたのだが、実際はどうなんだろうか。
それとも、ナショナルブランドの商品、大衆を相手にするマス商品であれば、今の時代もやっぱりテレビは大きな影響力を持つのだろうか。
元広告業界で働いていた者としては、大いに気になるところだ。