2014年8月5日

起業家にとっての大問題、生活費の不安

サラリーマンなどをやめて起業する人に対して、政府が年間650万円の生活費を最長2年間、支給する制度が今年中に始まると言う。


■起業家に生活費支給、

しかも、その生活費とは別に、1500万円を上限にした市場調査費や試作品製作のための費用も出ると言うのだ。

これはすごい。

起業家さんの立場としては、経済産業省所管の独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」の関連会社の契約社員となり、形は給料ということになるようではあるが、数年前に会社員を辞めて独立した私としては、何ともうらやましい話だ。

とは言っても、この制度の場合、実際に制度を利用できそうな人はかなり限られそうだ。本当に優秀な起業家に絞っていくという。

企業のあり方や個人の働き方が萎縮し、日本経済は萎縮していくなかで、国としても新しい産業を興していかねばばらないので、優秀な起業家を支援していこうという国の意図はよくわかる。

会社を辞めて一人で仕事をするというのは、当たり前のことながら、いくら働いても仕事しても、売上が上がらなければ収入が得られない。売上を上げて初めて収入を得るということだ。

そんなことは頭ではちゃんとわかっていたつもりだったけれど、私の場合、会社員として給与をもらう生活というのが予想以上に染み付いていたことを、退社後に痛いほど実感した。
私は、一定期間は売上0でも生活できるだけの用意をしてから退職したが、それでも売上0であれば不安がどんどん大きくなる。このまま売上が立たなかったらどうしよう、と思う。
扶養家族を多く抱えていればさらにその思いは強くなるに違いない。収入=生活費が心配になって、売上が立ちやすい手軽な仕事を次々引き受けて起業どころではなくなったり、就職活動をする人も少なくないと聞く。

そういうことを考えれば、この制度は本当にありがたい。
生活費の不安がなく起業準備ができるのだから。

しかし、意志の弱い人にとっては、ここは良し悪しになる可能性がある。生活費の助成が、起業進展スピードアップの足かせになるかもしれない。なぜなら、人は崖っぷちに立たないとなかなかやらない傾向があるから。

できることで収入を得るか、やりたいことで収入を得るか。~会社を辞めてから、この狭間で揺れていた自分を思い出す。

やりたいことで収入を得るのは難しく、できることの方が収入を得やすい。ましてや、やりたいことをどうやって仕事にするか試行錯誤していれば、ますますそれで収入を得るのは難しい。
そうなると、どうしてもできることで収入を得る方に流れやすくなる。
私の場合はそうだった。できることで収入を得る方が手っ取り早い。慣れているから悩まずにスイスイ進められる。
しかし、起業しよう、新たなビジネスを起こしたい、と思っている身にとっては、これは大きな障害になる場合がある。必死に考えることをついつい後回しにするからだ。

人と言うのはつくづく怠け者だと思う。水が上から下に流れるがごとく、ついつい楽な方へと流れていく。
起業家にとっての生活費は大問題であることに間違いないけれど、それでもそこが保障されないからこそ、必死に頑張れることだってある。退路を断たれるからこそ必死になって、馬鹿力を出せる側面もある。もちろん、その分自信を喪失するなど、とても苦しい思いもする。しかし、それがまた肥やしになって、トンネルを抜け出すことができるように思う。

とは言え、そこには基礎体力があるかどうかも大事であることを、最後につけ加えておきたい。