2010年4月22日

すさまじい競争その2

前回、20社近い参加となるコンペについて書いたが、この智恵の提案競争ということについて、もう少し考えてみたい。
私たちのような、モノではなく智恵を売るサービス業の場合、勝負はその智恵の内容で行うは当然のことだ。けれどその智恵でアウトプットされたものはほぼ使い回しができるものではなく、大量販売も難しく、その智恵のアウトプットはそのお客さんのための、いわばオーダーメイドだ。ということは、コンペで出した智恵の結果(=アウトプット)が採用されなかった場合は、タダ。俗に言う「タダ同然」ではなくく、「タダ」そのものである。
これは今のデフレとか値下げとかではなく、もはや今はやりのFREEである。けれど、そのコンペで採用されなかった智恵は、他のお客さんの目に留まることもないので新たな商機もない。
そういう勝負を繰り返すのは、勝負で勝つことを目標に置くにしても、かなりしんどいことだ。
例のクライアントのコンペのプレゼンテーションの日は、もう目前だ。今、各社は見せ方の工夫など、ツメの作業に入っていることだろう。
しかし今回、私はあえてそのコンペでの勝負ををやめようと代理店に提案し、結果的に辞退を決断した。これは前向きな辞退だと思っている。
機会均等と言えば聞こえはいいが、このようなコンペでここまで多くの会社のプレゼンを受けようというクライアントは、結局のところ、いい智恵を得られなくなっていくのではないだろうか? ビジネスマナーとしてどうなんだろう?とも思ってしまう。
牛丼屋さんの世界では、この経済不況を受けて、価格勝負の値下げ競争が始まっている。最初のうちは消費者も安くなっていいのだろうが、そのうちその価格を維持(またはさらに値下げ)するために、会社によってはきっと品質がキープできなくなる。各社はコスト削減を繰り返すうちに、よほどの体力がないとどんどん疲弊していく。
これとまさしく同じようなことが、コミュニケーション活動のような智恵の勝負をする業界にも起きているのだ。
その渦中にいる者としては、この競争に勝ち続けるか、この競争から撤退して違った土俵で勝負するか、どちらかしかない。負けるかもしれない競争のために日々ボロボロになりながらがんばるなど、私はしたくないし、共に頑張る者たちのためにも、してはいけないと思う。
智恵は、違う土俵を探し、新しい企画のために使わなくてはいけないと思うのだ。