「居場所ハウス」という言葉を聞いて、あなたが想像するのはどんな家でしょうか?
岩手県で実際に見てきたそれは、「施設」ではなく「家庭」をめざした、高齢者を中心に多世代の人が集まるまさしく「居場所」でした。
「将来は自分もこんな場所に入り浸りたい」
私と同じ気mポチを感じる人は少なくないと思います。
「居場所ハウス」の理念
岩手県大船渡市に「ハネウェル居場所ハウス」という場所がある。東日本大震災復興の拠点としてできた場所だ。
米国ハネウェル社から建設資金の支援を受けて建設された。
そこには、高齢者自らが社会的役割を見つけることで活動を促進させるNGO「ibasho」(本部;ワシントンDC)が大きく関わっている。
この「居場所ハウス」が、建築家・設計士らが学ぶ勉強会でテーマとして取り上げられ、その講師、NGO「ibasho」創設者が米国から招かれていた。
参加していたのは、高齢者施設や病院を手がける建築家や設計士だろうか。
縁あって私はそれに参加する機会を得、この「ハネウェル居場所ハウス」を知った。
「施設的」から「家庭的」へ
家庭は不便だし非効率的だし、片付いていない。
でも居心地がいいのは、家庭のそういうゆるさであって、完璧は実は心地よくない。
・・・そんな話から始まった。
その「ハネウェル居場所ハウス」には8つの理念がある。、
①高齢者が知恵と経験を生かすこと
②「普通」を実現すること
③地域の人がオーナーに
④あらゆる世代がつながり
⑤いろんな経歴・能力を持つ人が力を発揮し(できることを探す)
⑥地域の魅力や文化を発見し
⑦持続性ををもって
⑧完全を求めない。
高齢者の知恵や経験が生かされる場所を目指して作られた。
ゆるやかに混ざり繋がる場所。
多世代の知り合いができる場所。
さまざまな背景の人々が混ざって安心できる場所。
この話を聞き、これはどんなものかぜひ見に行きたいと思って行ってきた。
子どものころ遊びに行った、おじいちゃん・おばあちゃんの家のようなゆるさ
大船渡の高台の普通の住宅街の中に表れた立札のような看板。 |
古民家風建物の壁にはこんなメッセージがあった。 |
中に入ると、
大勢の人たちが何か食べながらテーブルを囲んでおしゃべりをしていた。
どなたがスタッフさんなのか、それともお客さんなのか、見る限りはわからない。
この居場所ハウスではランチも出しているということなので、
昼時にうかがっていただくことにした。
そうしたら、さっきまでテーブルを囲んでおしゃべりしていた女性たちが立ちあがり、キッチンで支度をはじめ、太巻き、お漬物、サラダ、うどん、フルーツ・・・
次々と食卓に食べ物が出てきた。
子どもの頃に、おじいちゃんおばあちゃんの家に遊びに行ったようだ。
どれも「懐かしく、ほっこりするような味だ。
ランチをいただきながら、館長の鈴木軍平さんにお話をうかがった。
この施設は東日本大震災の被災者支援でスタートした。
支援というのは、まず日常生活の支援。
生活環境の改善。
まず買物。
居場所ハウスでは朝市を開き、近隣の人が集まってくる。
元々近隣に住んでいる人たちや、仮説住宅に住む被災した人たちで
80代など、高齢者の人たちが中心だ。
来た人たちは買っていくだけでなく、来た人同士が交流する。おしゃべりする。
そういう人たちのイキイキしている一人一人の顔を見るのが嬉しいと、
館長の鈴木軍平さんは言う。
お話を聞いている途中に、次々といろんな人が表れる。
外で、このハウス関連の何か仕事をしてきた人たち、
偶々届け物を持ってやってくる近隣の人・・・
そのたびに鈴木さんは声をかける。
勉強会で聞いた話そのまま、その理念を貫いて運営されているのがよくわかる。
とても居心地のいい空間だ。
続けるためには課題もある
それでも運営し続けるためには、なかなか難しい現実もありそうだった。
最初は補助金だのみで運営してきたけれど、2年目になった。
これからどう自立していくか、が課題だ。
自分たちで運営する。
お客さんも一緒になって運営する。
・・・そうは言っても、
誰もが自由に出入りできる「居場所ハウス」であるためには
決められた時間はいつも開いていなくてはなりません。
それは最低限必要なことです。
たとえ誰も来なくても。
そうなると、一番の問題は人件費です。
いくらボランティアを中心に運営する、などと言っても
お金を全く払わずに、ということはできないし、したくはありません。
だって1日2日の話じゃない。継続していくいことが大事なんですから。
今、「居場所ハウス」ではそのための収益事業を少しづつ始めようとしていた。
いただいた昼食の提供も、居場所ハウスとして野菜を作ること、
それを朝市で販売すること、などもその一環である。
理念だけでは成立しない。
さらに、たとえ収益にならなくてもより多くの人に施設を利用してもらうためにと、次々と新しいことを始めようとしていた。
イベント的なことを企画したり、実施したり・・・。
そのために毎月定例会を行い、ボランティアの人たちも一緒に企画を考える。
ボランティアも高齢者が中心だ。
今、新しい試みとして「わらしっこ見守り隊」というのが始まった。
高齢者だけでなくいろんな世代に、ということで子どもたちにも来てもらおう、と。
子どもたちを見守っていこうという取り組みだ。
中心となるのは、元学校の先生である。
顔を出さないと、みんなが心配してくれる
昼食をいただいたテーブルの奥にはこんな和室が広がる。
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スタッフの一人が話していた。
あれ? ○○さん今日はまだ来ていないね。
どうしたんだろう?
○○さんとは、居場所ハウスに毎日欠かさず来ている女性だ。
普段家で食べる分程度の野菜を畑で作っているという彼女は、
自宅から歩いて約20分。
毎日来ているから、来ないと自然にそう思うようになるのだ。
その直後に、話題の彼女がやってきた。
来れば楽しい。
誰かしらいるからね。
ここがあるから、毎日歩くんだよね。
この女性がやってくるほんの少し前、
それはまさに施設ではなく「もうひとつの家」のようなものだった。
いつか東京にも
こんな施設が東京にもできたらいいと思う。
隣近所とのお付き合いが薄くなっている都市部だからこそ、
いろんな人が自由に出入りできるような場所がほしい。
ときには茶飲み話をしに、ときにはイベントに参加するために、ときには・・・。
夢はどんどん広がる。
デッキがあって、スペースもたっぷり広々。
もし都市部で、と考えるとこんな余裕あるスペースはなかなか難しいかもしれない。
例えスペースは無理でも、こういう居場所があったらいい。
あってほしい。
もしあれば、私も行きたい。将来は入り浸りたいものである。
ハネウェル居場所ハウス
大船渡市末崎町字平林54-1
「居場所ハウス」の活動を継続するためのサポーター(賛助会員)募集中。
年会費/個人サポーター(1口) 2,500円
※会費は「居場所ハウス」の運営、「居場所ハウス」を通した地域づくりために活用。
振込先(ゆうちょ銀行口座記号・番号)
*02280-7-115147
加入者名(漢字):特定非営利活動法人居場所創造プロジェクト
加入者名(カナ):トクヒ)イバショソウゾウプロジェクト
詳しくは「運営サポートのお願い」参照