2015年1月26日

人と関わっていないと、心だけでなくカラダまで・・・・・人づきあいと健康との関係

まだ世の中に「食育」という言葉がなかった今から30年以上前に、子どもの個食(孤食)が注目され始めた。



なぜひとりで食べるの―食生活が子どもを変える 
日本放送出版協会 (1983/01)

栄養素の働きに目が行く中で、誰と食べる?どこで食べる?という「食べる」行動と健康との関係に着目したのが、当時はとても新しかった。
著者が実施した子どもの朝食調査では、ゼミの学生も多数参加しており、栄養学専攻の大学生だった私もその一人として都心の小学校に出向いた。
学校に行く前に一人で菓子パンをかじる、という朝ごはんの絵を描いた子どものお母さんは、明け方まで働いていてまだ寝ている・・・。
一人で食べる子どもの栄養状態は悪く、貧血や不定愁訴など、健康状態も悪かった。
今のようにコンビニもなかった時代だ。

そこから食教育の重要性が語られ、その後「食育」と呼ばれるようになり、今ではCSRとして食育に取り組む企業が多い。


さて、それから30年。

生活習慣病やメタボが問題とされるとき、まず注目されるのが高血圧。
その高血圧が、
独身の一人暮らしは、既婚者の1.75倍!
同居人がいれば既婚者の1.15倍!

大人の問題だ。
NHKのニュースで報じられたことなので、見た人も多いに違いない。


厚生労働省「国民健康・栄養調査」の結果を基に、滋賀医科大学の三浦克之教授などのグループが分析した結果だという。
これは、実際に一緒に食べるかどうか、食べたかどうかではない。

血圧のデータと、結婚しているかどうかの関連を分析すると
高血圧の人は、既婚者だと48.2%だけど、独身者は68.%。

むしろ、家族関係が多様な時代になった今、
調査でも
同居人がいれば既婚者の1.15倍!
と言っているように、これは既婚か独身かということよりは、同居人がいるかどうかに注目するところだろう。
実際、既婚者でも別居している人や家庭内別居、あるいは結婚していない同居人、シェアハウス・・・・いろいろな形がある。

一人暮らしだとどうしても食生活を気にしなくなりがちだから、言われてみればわからなくもない。
それでも今の時代、世帯人数で最も多いのが一人だ。


報道では、
 食べすぎに注意。
 高血圧防止なら、カリウムを。生野菜、付け合わせの野菜を。
 塩分を控えめに。
 一人暮らしはカップラーメンを食べることが多いから、調味料は全部使わないように。
等々、一人暮らしの人への食べ方アドバイスをしていた。

まあ、栄養学的にはそれはもちろん正しいアドバイスではあるけれど、
私は、ここは人との関わり方に注目したい。

昔食いしん坊で大食いだった私自身も、最近は量も食べられなくなり、食べることやおいしいものへの執着がみるみる減ってきた。
それに伴って、好きだった料理も面倒になり、一人ご飯の時はろくなものを食べていない。

できれば人と暮らす。
例え暮らさなくても、できるだけ人と関わる。人と食事をする。
人との関わりは心の問題として語られることが多いけれど、
「食べる」という行為が心だけでなく、カラダ、健康面にも影響を与える。

オトナだからこそ、人と食べることを意識したい。
外食でなくても、家に定期的に集まって食べる形でもいい。

昔「おいしい顔ってどんな顔?」というコマーシャルがあったのを思い出す。
「おいしい顔」とは、食べる顔、それも人と一緒に食べる顔。

人と一緒に食べよう。